老後のおカネ

公的年金から、借金問題まで。

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これから、公的年金は老後資金としてアテにできなくなりますか?後編

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まずは、これから、公的年金は老後資金としてアテにできなくなりますか?前編を参照して下さい。この記事だけを単独で読んでも、イマイチわかりにくいはずです。

平成21年度財政検証

「これから、公的年金は老後資金としてアテにできなくなりますか?」という問いに対して政府が平成21年に用意した「答え」がこちらの表です。

平成21年度財政検証データ

厚生労働省HP
平成21年財政検証関連資料(1)

前提は、以下のとおりです。

  • 保険料負担額について、各世代とも前提条件は同じです。20歳から60歳まで、平均賃金で働いたものと仮定。
  • 年金給付額には、妻の分(専業主婦40年)も含まれています。また、夫婦同年齢で、平均寿命まで生きるものと仮定。
  • 年金給付額には、夫の死後に妻が受け取る遺族年金も含まれています。
  • 年金給付額は、「1960年生まれ」までは2段になっています。上段が60歳以降、下段が65歳以降。「1970年生まれ」以降は、65歳以降分のみです。
  • 負担給付比率も、年金給付額と同じ構成になっています。

世代間格差は明らか

よらば大樹

細かく、見ていきます。

負担給付比率が、年金給付額を保険料負担額で割算したものです。リスク vsリターン、です。世代間格差が明らかになっています。

1940年生や1950年生の保険料負担額が極端に少ないのがわかります。これは、インフレによる物価変動だけでは説明できません。実際に、「軽い負担」でした。年金制度の賦課方式と積み立て方式とは何ですか?で説明したとおり、日本の年金制度は、運営途上で賦課方式に変わりました。変えざるを得なかったわけです。原因は、政府による積立金の運用利率の設定が高すぎたためです。つまり、若い世代の負担増は、少子高齢化だけが原因ではないということです。いわば、人災。

60歳前半において全く年金が支給されない世代の「利回り」が低いのは明らかです。

とはいっても、負担給付比率を見ると、「若い世代でも最終的に支払い保険料が2倍以上になってかえってくるなら、そんなに悪くないじゃないか!」という数値になっています。

残念ながら、保険料負担額に事業主負担分が含まれていません。レポート中に、事業主負担分を含めて計算するのは「問題がある」となっています。なぜ、「問題がある」のだろう?と考えてみると、このレポートの作成者が公務員だからです。

厚生年金保険料は、事業主と被保険者が半分ずつ負担することになっています。公務員の場合、民間会社の事業主負担分は「税金」でまかなわれています。だから、「問題がある」とする感覚もわからないではありません(笑)。確かに、公務員の場合は問題かも。

ということで、前提を民間企業のケースとすれば、「負担給付比率」の数値は半分にするのが妥当といえます。

ということは、1970年生まれ以降は平均寿命まで生きて、何とか支払い保険料がかえってくるだけの話か!という結論になりそうですが・・・。

かえってくるのでしょうか?

この表のシミュレーションは、以下の数値を前提にしています。

  • 賃金上昇率 2.5%
  • 物価上昇率 1.0%
  • 運用利回り 4.1%

この数値が2105年まで、継続することになっています(笑)。

平成21年時点ですから、95年間です。

ちなみに、平成16年における(最後の)財政再計算の前提は、こうでした。

  • 賃金上昇率 2.1%
  • 物価上昇率 1.0%
  • 運用利回り 3.2%

平成26年度の検証で同じ形式を続けていたなら、いかなる数値を用意しないといけなかったでしょうか(笑)。

それぞれの数値を検証してみます

賃金上昇率について

直近の数値については、こちらにグラフがあります。

スクリーンショット 2015-04-05 14.13.57

厚生労働省HP

また、長期傾向については、老後のために、お金はいくら準備すれば良いのでしょうか?をご参照ください。

物価上昇率について

デフレ脱却を目指すアベノミクスは、年金とカンケイがあるのですか?にまさしく、そのものズバリのグラフがあります。

以上2種類の数値は、「現実離れしている」としか言いようがありません。

運用利回りについて

この数値だけは、少なくとも直近については、「リアリティ」があります。第2次安倍政権発足以来、株価は上がりましたから。その結果です。

年金積立金運用実績

平成25年度 年金積立金運用報告書
厚生労働省HP

しかし、残念ながら、積立金の運用利回りが直近で少々改善したからといって、公的年金財政に及ぼす影響は、限定的なものです。現状、公的年金は賦課方式で運営されている以上、本来、積立金は、なくても良いはずです。

3種類の数値のうち、賦課方式下で最も年金財政に影響するのは、間違いなく賃金上昇率です。賃金上昇率に「現実離れ」した数値を組み込んでいるとすれば、負担給付比率の予測値がどのようになるかは、明らかです。

つまり、負担給付比率を2で割った数値が「1.0」を下回れば、すなわち、「平均寿命まで生きても、払い込んだ保険料はかえってこない」という結論になります。

ちなみに、このサイトでは政府発表の数値のみしか取り扱わないことにしていますが、民間シンクタンクの予測では、もっと年上の世代についても、公的年金の生涯収支をマイナスとしている事例は、いくつもあります。

まとめ

これが、「 公的年金は老後資金としてアテにできなくなりますか?」という問いへの答えになります。とはいえ、世間にある「公的年金を全否定する立場」に同調するのも賢明ではありません。

夫がサラリーマンなら、遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえますで確認したとおり、公的年金は時に「強力な生命保険」となります。また、基礎年金の給付の半分は、すでに税金ですから、「年金制度がハタンする」というのも、リアリティのある話とは思えません。

といっても、もちろん、黙って泣き寝入りしておこうといういうのではありません。年金制度は崩壊すると考えている方へ、の記事にお進みください。

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