老後のおカネ

公的年金から、借金問題まで。

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高橋洋一『「年金問題」は嘘ばかり』PHP新書〜とりあえず、ツッこんでおきます(笑)〜

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著者メインの主張は「公的年金はハタンしない」というもの。もちろん、今日でもハタン説を唱えている連中と比較すれば、はるかにマシだとは感じるところです。が、「嘘ばかり」と題したタイトルの本に、「?」と思う箇所が少なくありませんので、とりあえず、ツッこんでおきます(笑)。個人的には著者の「国家財政」をめぐる著作を愛読する立場ですが、こと「年金」となると緻密な議論が必要かと。なお、引用箇所は、すべて『「年金問題」は嘘ばかり』からです。

公的年金は、きわめてオトクな金融商品

こんな「お得」な年金をもらう権利を、未納(滞納)で放棄してしまうなんて、あまりにもったいなくて、ちょっと考えにくいところです。

国民年金についての著者の評価です。こいう結論になってしまうほどに、国民年金は単体なら、「オトク」というのは事実です。理由は、基礎年金給付の半分が税金で賄われているからです。世間に多い「公的年金ダメダメ説」に洗脳された人たちには、「まさか」のことに違いありません。少なくとも、日本国民なら「国民年金は、貰っておかないと大損」ということです。

著者の場合、この「楽観論(?)」は年金全体に及ぶわけなんです。が、個人的には同意できません。私の場合、厚生年金制度に深く関わるほど、負担と給付のバランスは悪くなっていくと思っています。著者は、多くの人が疑問視する公的年金財政の検証について、こんな意見を述べています。

平成21年(2009年)の財政検証では、平成28年度(2016年度)以降の運用利回りを名目4.1%(経済中位ケース)としていました。物価上昇率は1%、実質賃金上昇率は1.5%という想定でした。これに対して、「4.1%の利回りの想定が高すぎる」という批判がありました。
しかし、名目成長率を4%にできれば、長期金利が4%になることは普通のことですから、それほどおかしな数字ではありません。

私は、「おかしな数字」と感じています(笑)。著者には、「なぜ、この数字をあてはめたか?」という点を考えていただきたかったものです。この数字を当てはめないと、一定年齢以下で「生涯にわたる支払年金保険料と給付額」の関係はマイナスとなってしまうんです。つまり、少々長生きしても、生涯支払った保険料は返ってこない(笑)。

二階部分は、国民年金の上乗せとして報酬比例の年金である被用者年金があります。サラリーマン(民間企業職員)の場合は厚生年金、公務員と私学教職員は共済年金でしたが、平成27年10月以降は、共済年金に一元化されました。

言っておきますが、「年金一元化」が実現した理由は、ひとえに「共済年金の財政悪化」なのです。厚生年金とゴチャ混ぜにすることで、事実上ハタンしていた教材年金は救われたのです。いい加減なことを言っているわけではなくて、教材年金のサイトに、きちんとその趣旨が書かれていたのですから(笑)。

平成27年10月と言えば、世間の話題はマイナンバー。おかげで、「一元化」は何の話題にもなりませんでした。

「ねんきん定期便」の中に、「これまでの保険料納付額」という欄があるはずです。ここに累計の納付額が記されていますが、これがレシートに相当します。労使折半で会社が半額を負担していますから、国はこの欄に書かれた数字の倍の金額を受け取っています。

なぜ、会社負担分を「保険料納付額」に入れないんでしょうか?会社が負担した分は、「保険料ではない」とでも言うんでしょうか?本人負担分しか納付したと見なさない、というのはまさに「公務員の感覚」です。共済年金の場合、民間で言う「会社負担」は税金で賄われますから。この感覚に違和感を感じないわけです。

なぜ著者も、この点にこだわらないんでしょうか?理由は、著者ご自身が元財務相のキャリア、元公務員だから(笑)。つまり、「ねんきん定期便」をつくった人と同じところに立っているからに他なりません。

公的年金は、給料の何パーセントくらいもらえる?

所得代替率をめぐるくだり。

厚生年金の保険料率は約18%ですから、倍にすると36%です。「なんで、日本では50%とか60%という数字が出てくるんだろう」と不思議に思っていました。

現状、わが国の「所得代替率」は夫婦2人分で計算します。夫は厚生年金保険料を支払いつつ40年間にわたり平均賃金を受けるサラリーマン。妻は、その間、ずっと専業主婦。いわゆる「モデルケース」。著者の言うように、「個人が前提」となっていません。つまり、奥さんに支払われる年金額分は、丸ごと「上げ底」となります。結果、所得代替率は著者の予想を超えて「高く」なるわけです。

ということで、著者による「第三号被保険者」の背景説明のくだり。

なぜ、そのようになっているかといえば、日本の国が、「低所得者や専業主婦(主夫)は、社会全体として支えるべきである」という考え方をとっているからです。その考え方に基づき、このような方々の分の国民年金の保険料は、その他の第1号被保険者や第2号被保険者が肩代わりしたり、国庫から負担金を出すことによって支えているのです。

というのは、必ずしも「正しい」とは言えず、今となっては「所得代替率を高く維持するため」という側面もあるわけです(笑)。ちなみに、所得代替率の50%維持は、法律にビルトインされているわけですから、第3号被保険者という制度は、カンタンにはなくならないことは明かです。

積立方式から賦課方式へ

日本の年金制度は、昭和36年に国民皆年金になりました。それ以前は皆年金ではありませんでしたが、厚生年金制度があり、積立方式で行われていました。自分が積み立てた分を受け取る方式です。
ところが、急激なインフレが発生したため、給付が厳しくなりました。積立方式はインフレに弱い方式です。そこで、積立方式を修正し、将来世代につけ回すことによって、当時の老齢世代への給付を増やすようにしました。部分的に事実上の賦課方式が取り入れられた状態です。

日本の公的年金制度が、積立方式から賦課方式へと変わったのは、インフレが主たる要因ではなく、当時の厚生省の「計算ミス」による積立金不足です。経済学者の野口悠紀雄氏の研究が知られ、当の厚生労働省も、この事実は認めることろです。

ハタンするのは年金制度ではなく、あなたの老後の生活

公的年金というのは最低限の「ミニマム」の保障です。ミニマムの保障だからこそ破綻しないのであり、現役世代の給料と同じくらい年金をもらえる制度をつくってしまったら、現役世代の人は給料の大半を保険料として納めなくてはいけなくなり、制度はすぐに破綻します。
現役のときの保険料負担をできるだけ少なくする代わりに、老齢になってからもらえる年金額は「ミニマム」というのが、現在の年金制度です。逆にいえば、負担の低さと給付の低さのバランスが取れていれば、そう簡単に破綻することはないのです。

この部分。ミもフタもなくホンヤクすれば、要するに、「年金制度が継続しても、その下で生活が成り立つかどうかは別問題」ということになります(笑)。というか、ハタンするのは年金制度ではなく、高い確率で、あなたの老後の生活の方だ、と言っているに等しい。

ということで、結論としては、

いつまでも働けるというのは、とても大事なことだと、最近しみじみと実感しています。これほどありがたいことはありません。個人的なレベルで考えても、「老後に働ける」ということが、今後ますます重要になっていくでしょう。

ということ意外に考えられません。著者は、金融商品選びのポイントなどのアドバイスをしていますが、これからの老後は、「蓄え」で何とかなるほど短い期間ではありませんから。

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